お金のこと以外やったらなんでも聞いて

あ、お兄ちゃん久しぶり。元気。どう。
相変わらずやね。男前や兄ちゃん。ええ。
ああ若いね。やあ、どう見ても二十代やなあ。
いやいやまあ口下手で駄目ですわ。
いやいや、今日までやけど。
なんでも聞いて。はいなんでも聞いて。
お金のこと以外やったらなんでも聞いて。
飛ばします飛ばします。すぐ切れてまうけど。バッテリー切れる。
まあまあはい。ええ長くてもええよ。僕大丈夫。うん今日中は大丈夫や。
今日中まで持つから。取りあえず十二時間持つから。任してください。はい。それだけ取り柄でございます。

へえ。ようやっとるわ。はや四十七年やて

明石屋の看板、よう背おうとうから重たいわ。重たい重たい。
ええとね。そやから。
まあ取りあえず一応大学もかじっただけ行っとったけど、途中お金払わんようなったからね。
どない言うたらええんかな。除名のほうやね。中退やなく。除名の方ですわ。
京都産業大学行っとって。どない言うの、取りあえず。
そやから二十歳くらい。二十二。二十歳くらいやな。
そしたら今六十七やから。
と言うことは四十七や。
へえ。ようやっとるわ。はや四十七年やて。
はっきり言うて魚屋さん以外やったら勲章もんやろ。
例えば宮大工やとか。そう言う関係のな。
仕事で大方五十年言うたらものすごいもんやけどね。ねえ。
ただ何のことはない。誰かただ見よるだけや。

でも言われますわ。それ以外無いで言うて

よくそうよう言われたわ。
学生時分から連れが電車の一両乗って、僕が一番最後乗った。
田中、どこ乗ったか分かったわ言うて言う。
それはだいぶ言うとりよったかね。
高校は一応取りあえず報徳なんですけど。
その時分から。
前からやな。そやから中学くらいからやね。変わらず。
こう頭凹んでるから。そこへ鉢巻き入るようなっとうから。
そやから高校時代も丸刈りやったし。報徳男子校やから丸刈りやった。
中学時分も部活しとうから丸刈りやった。
ずっと同じ髪型ほとんど。
そやから昔の連れに会うてもみんな、いっこも変わらへんな言うて。
髪型変わってないわ言う。
でも言われますわ。それ以外無いで言うて。
迷わず。よう迷ってんけどな。
ここへ戻されんねん。

だから人のせんようなことをね。結構、先々先々行くから

取りあえず、うちの親父がへんこで。
ここはまあ神戸でやってるから、神戸の本場に買いに行く人多いやん。
どこの店も同じような買いになるから、そんなん面白ないので自分だけ単身明石買いに行って、ほんで明石屋という。
明石の魚売ってるから明石屋という看板。
それまでここの市場から明石行っとう人居らんかった。
せやから一番やで。
競りの番号でも一番やぞ。
どこにも居らん。
もうなんでも一番好きやから。
大事なこと。
そやからもう人と変わったことが好きやから。
そうまあまあ、長く続けると言うかまあ、どない言うの。
次から次とこう考えていってね。
だから例えば生け簀にしたって、まだどこも置いてないときから置いたし。
明石とか昼網なんてこと、あっちからもう行きよったし。
だから人のせんようなことをね。結構、先々先々行くから。
それがまあ、ええのんか悪いんか分からんけど。

もうほんまに数ですよ。もうどんな人でも

取りあえず魚屋という商売に誇り持ってるし。
何か有るごとにもうテレビ番組で魚なんかかなり出とるもん。
だからどう言うんかな。
ほんでテレビ見たらこれは、例えば養殖の魚とか天然の魚やとかもうパッと見たら分かる。
そら散髪屋さんがパッとテレビ見て俳優見て、ああこの頭はカツラやな言うのと一緒で。
見たら分かるで。そらほんまに。
そらやっぱりそれは、例えば仕事でもそやけど。
端から見て、料理でもしよって、この人様なっとうな言うたらかなり上手い。
第三者から見て、この人はかなり様なっとうなって言うたらかなり上手い。料理でも。
まあそれはだいたい分かる。
この人はもう動きが無駄が無いし。そうなってくるわ。料理でも慣れてくるとね。
ほなうちは今でこそ若い組やったけど。
若い寮に居るときは五六年や言うたら年末ね。
例えば店に来たんが四月やとするやん。
ほんで十二月の年末を一回越えると腕がコンと上がる。
だから年末言うたら量が多いから、それだけ捌く量が多いでしょ。
ほんならグッと上手くなる。
だから料理はもう絶対数やね。
たぶんもう数。
下手な鉄砲は数打ちゃ当たるやないけど。
もうほんまに数ですよ。もうどんな人でも。
言うても難しいこともなんともないよ。
数さえ捌いたらまあ出来る。
もう毎日やっとったら否が応でも出来ますわ。

歳取れば取るほどやっぱりこだわってくると言うかな。出てくるわ

そら生きてる。
生きてるのも有るし、無駄が有ったとこもあるわ。
だから俺らみたいにどない言うの、何でもかんでも長く続けりゃええもんでもないねんけどな。
長いことやっとうから偉いもんでも無いんやけど。
だけど仕事は絶対続けた方がええな。長く続けた方が。
もう毎日が勉強やもん。
もうこんなもん。若いときはそない思わなかったけど。
歳取れば取るほどやっぱりこだわってくると言うかな。出てくるわ。
若いときはそないにこだわりとか無かったけど。
あんまりこだわってもええことないねんけどな。
こだわってもええことは無いのよ。
例えばお客さんなんかでもよう言ってくれるけども。
関東の人がまあ関西に来るとするやん。
ほんなら例えば魚の鯛が。
こっちやったら光っとるとか締まっとるとか。
関東なんかそんなレベル違う。
だから鯛やねん。
そやから光っとるとか締まっとるとかそう言うランクではない。
だから取りあえず鯛やったらええわと言う。そう言うレベルや。
そやからこっちから関西の人が例えば関東へ行ったら、もう全然食べられへん。
ほんで帰ってきたらもとある鯛。

魚言うのは案外ね。繋がるんよ代々

そやから八百屋さんとか知っとったんが言うけども。
魚言うのは案外ね。繋がるんよ代々。
おじいちゃんおばあちゃん、その前ずっとこう繋がって買い物来てくれるところがある。
八百屋さん言う商売は安かったらどこでも行くもん。
だから魚屋さんに関してはもうずっと、先代から続いて買い物来てくれるお客さんが多いね。
だから僕らなんかもう、お客さんの名前、そのおじいさんの名前、それからその人の名前、職業、それから子どもさんの名前。
それも孫の名前までだいたい覚えてるもん。うん。
そら。いや大したもん。家のこと入ってもとうからね。
皆よう覚えとんなそんだけって言うけど、だいたいもう名前出てきますわ。
仕事は何してるかとか。そんなん出てきます。

お客さんに合わせると絶対、伸びていけへんと思う

今こだわっている言うのは、どない言うたらええんかな。
お客さんに合わせるやなしに、自分のペースね。
お客さんに合わすんではなくて自分がええなあと思うことをやっていくのが今のこだわりやね。
お客さんに合わせると絶対、伸びていけへんと思う。
自分の。
いや気に入ってくれたらお客さん来てくれたらええわと言う、そう言うこだわりやね。
だからお客さんに合わせるんやなしにね。
ある程度自分とこの商品を。
そら余所よりも高いかも分からへんけども。
あ、これは高いけどもええなと言うような目での仕方。
それがこだわりやね今のね。

やっぱり、値段は嘘つけへんもんな

いや芸術家とは言わん。
そこまで行かへんけどただ単にやっぱり。
品物はやっぱり。なんでもかんでも。
着てる服は僕、ユニクロとか着てるよ。
そやけど、やっぱり、それはそれなりの物で。
そうやね。やっぱり、値段は嘘つけへんもんな。
競りでもそやけども、やっぱり。
明石の昼網の競り言うのは、はじめ例えば百円やったら百円で言うとって。
その値、品物に百円の値打ちが有ったら自分は手出さへんわけ。
百円より値打ち無いな思たら五十円でもええわけ。
それを競りを出して、それで合うたら落とすわけ。
だから自分が見た目よりもこの商品が百円より値打ち有るなと思うたら値段上げる。
だからそれに対する値段やから。
だから中央でもそうやけども、ある程度値段というのはそこそこ妥当な値段付けてるわけよ。
そら誰でも、今何でもかんでも安売りというのもちょっと考え物なとこ有るし。
お客さんとも安いのにな。そこに付くと言うのも。
もうちょっと考えてこう。
それはそれなりのな。
そやから皆さんの財布の中身でな。合わせてもうて。
そやから結構ね。
年末になったら、ここ一番いう時に来てくれるお客さん結構居るんですよ。
普段は買わへんけども。
せやけど、ここ一番言うとき来るから。
買い物来てくれるお客さんとか。はい。

じゃんじゃん持って来てください。無料で料理さしていただきます

どうもありがとうございます。
いつもご利用いただきましてありがとうございます。
灘中央市場はまだまだ頑張ります。
その中でも明石屋も頑張っております。
これからもどうぞよろしくお願いします。
魚の下ごしらえ。
まあ例えば今ようお客さんが釣ったから料理してくれへんかなと言うお客さん結構居ってやから。
じゃんじゃん持って来てください。
無料で料理さしていただきます。
どうもありがとうございます。明石屋でございます。