待ったなし。キャッシュレス社会

「キャッシュレス」「電子マネー」と言った言葉をよく耳にするようになりました。
来年10月に予定されている消費増税に伴って、中小の対象店舗で商品を購入する際、クレジットカード・電子マネー・QRコードといったキャッシュレス決済を利用した消費者に、購入額の2%をポイントで還元するといった案も報道されています。
キャッシュレスの導入・運用に関する補助金の付与や税制面の優遇措置など事業者への支援も注目されます。
政府は東京オリンピック・パラリンピック、大阪万博を見据えて、現金でのお買い物を現在の80%から60%へ、最終的には20%にすることを目標としています。
「現金でしか買えないお店には行かない」と言われる日も近いのかも知れません。

キャッシュレスでのお買い物が増えてきていませんか?

例えばクレジットカードでお支払いをする機会、増えてきていませんか?
ネットでのお買い物、携帯電話の料金、電気代などの公共料金など、「カードを見ていない」ところでクレジットカードが使われています。
クレジットカードというと、飲食店や家電量販店などでカードを出して支払いをするイメージが強かったのではないでしょうか。
実は、皆さん意識していないところでクレジットカードを使っているはずです。
知らない間にポイントが付いていて、ちょっと得した気持ちになります。

クレジットカードに関する総合調査2017年度調査結果レポート 株式会社ジェーシービーより

日常になった交通系電子マネー

電車やバスに乗るとき、ICOCAやPiTaPaを使う人が増えています。
10月からJR西日本でもPiTaPaを使えるようになりました。
切符を買うために自販機の前に並んでいる人は少なくなりました。回数券を買わなくても運賃の割引があり、お得です。
駅構内の自販機や売店はもちろん、ICOCAやPiTaPaでお買い物ができるところがたくさんあります。急いでいるときには本当に便利です。
このように私たちはすでにキャッシュレス社会の恩恵を受け始めています。

新しいお財布。プリペイドカード

イオンやダイエーに行くとWAONカードで支払いをしている買い物客を見かけます。
カードを使う人が増えたことで、レジの行列も速く進んでいるようです。
今月使うお金をWAONにチャージ(入金)しておくという主婦が増えてきています。
カードがお財布の代わり。クレジットカードのように使いすぎることもありません。
普段からイオンやダイエーでお買い物をすることが多い人にとっては、WAONは財布のように使えるカードになっているのでしょう。
イトーヨーカドーの近くではnanacoをお持ちの方が多いようです。
楽天Edy やau WALLETなど、使っているサービスや集めているポイントによって賢く使っている方も居られます。

スマホを使った電子マネー決済

これまでも「おサイフケータイ」機能が付いたスマホを使って、電子マネーやクレジットカードでの決済をすることができました。
カードでは無く、スマホアプリで電子マネーを使う人も増えてきています。
スマホであれば、残高や利用履歴を見ることができますし、家計簿アプリに登録することでお金の使い方を「見える化」することもできます。
銀行口座やキャッシュカードを登録しておけば、残高が足りなったときにもその場でチャージすることができます。現金のようにATMを探さなくても済みます。
パスワード、指紋認証のような生体認証を使えるのも安心です。
ここにアップルペイ(Apple Pay)、グーグルペイ(Google Pay)というスマホ決済サービスが加わりました。
iPhoneならiD、QUICPay、Suica。アンドロイド系のスマホなら楽天Edy、WAON、nanaco、QUICPay 、Suicaといった電子マネーを使うことできます。

今注目、QRコードによるスマホ決済

決済用の端末を用意したり、カード会社に手数料を支払ったり。特に個人商店にはクレジットカードや電子マネーによる決済にはほとんどメリットはありませんでした。
しかし、昨年あたりから風向きが変わってきたようです。
訪日中国人観光客が増えて、国内でもQR決済の需要が高まってきました。
政府も外国人観光客が決済で困らないようにキャッシュレス化を進める姿勢を明確にしました。
QRコード決済は、店舗の用意したQRコードをお客様のスマホアプリで読み取ったり、お客様のスマホアプリで表示したQRコードを店舗の端末で読み取ったりすることで決済ができる仕組みです。特別な端末を必要としないことから導入コストや手数料を下げることができます。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、みずほFG、三井住友FGのメガバンク3行が「QRコード」の規格を統一させて、共同出資のシステム会社設立を検討し、19年度の実用化を目指すことになりました。
中国で人気のAlipayやWeChat Pay、日本でもLINE Payや楽天Pay、ドコモのd払い、8月29日からはAmazon Pay、来年2月を目指しているゆうちょPayなど、大手企業が続々とQRコード決済に参入し、お得なサービスやキャンペーンを競い合っています。

コミュニケーションの中で簡単に割り勘、送金。LINE Pay

LINEを使ってコミュニケーションをしている人にとってはLINE Payは便利だと聞きました。そこでLINEでの割り勘を体験してみました。
お食事会の後、LINEアプリからウォレットを選びLINE Pay、そこから割り勘を選ぶだけ。LINEグループを作っていれば、送金から割り勘を選べばOKです。
メンバーを選んで合計金額を入れて割り勘依頼を送るだけ。現金で支払う時の面倒さを考えると、まったく別次元。ポイントが付きますので幹事の方にはお得。お店でLINE Payで支払うことができれば、とてもスマートです。
LINEには友達に送金する仕組みもあります。
「今度会った時に」というのも面倒ですし、相手の銀行口座を聞いて振込手数料を支払って送金するというのも仰々しい。LINE Payに残高があれば、この仕組みを使いそうです。
普段のコミュニケーションに現金を使わないお金のやり取りがスマートに入ってくる。そんな時代がもうそこまで来ていることを予感します。

政府もキャッシュレス社会を推進

政府はキャッシュレス社会の実現が、国民生活の利便性の向上や外国人観光客の増加のために必要であり、これからの社会に不可欠なものとして位置付けています。
政府の狙いは3つあります。
第一に、インバウンド消費拡大による経済活発化です。
東京オリンピック・パラリンピックに向けてキャッシュレスが当たり前になった外国人観光客が押し寄せてきます。サービス拠点のインフラ整備が急がれます。
第二に、現金のハンドリングコストの削減です。
貨幣を製造し、保管し、流通させるには膨大なコストが掛かります。
日本の貨幣の製造コストは日銀によると年間約517億円。みずほフィナンシャルグループによると金融業での現金管理/ATM網運営費等に約2兆円、小売/外食業での現金取扱業務人件費等に約6兆円、合計で年間約8兆円の現金取扱コストが掛かっています。
キャッシュレス化によって、官民に掛かるこの負担を軽減することが望まれています。
第三に、お金の流れを把握し、徴税を徹底したいこと。脱税やマネーロンダリングなどの犯罪を未然に防ぐ効果が期待されています。

世界はもうキャッシュレス社会

日本のキャッシュレス決済比率は20%、韓国89%、中国60%、アメリカ45%と比べて大きな開きがあります。

「キャッシュレスビジョン」平成30年4月経済産業省より

お隣の韓国では政府がキャッシュレス化を強力に推し進めました。
所得税の控除や宝くじに当たる権利、年間売上が一定額(約240万円)以上ある小売業者に対するクレジットカードの取り扱いの義務づけ、コインレス化社会の実現のためにお釣りとして受け取るコインを電子マネーとしてチャージするといった政策を実行に移しています。
世界初の法定デジタル通貨「eクローネ」を検討しているスウェーデンでは、2010年に約40%だった小売業の現金支払いが2016年には15%まで下がりました。
2011年に決済端末を無料で配ったこと、主な銀行が現金取扱コストを削減するために「Swish」というスマホ決済サービスの提供を始めたことでキャッシュレス化が加速しました。
銀行店舗の約56%の店舗では現金の取扱がありません。「現金お断り」という看板を出している店も少なくないようです。

外国人観光客への対応

Visa社の調査では現金しか使えないことに不満を持つ外国人旅行社が4割います。
東京に来た人の9割はカード払いをしようとし、そのうち6割は断られたことがあります。
現状のカード払いのインフラを改善しないと、2020年日本に来る旅行者が4,000万人になった場合、約1.2兆円の機会損失が発生すると試算しています。

キャッシュレス社会を体験してみよう

キャッシュレス社会に向けて、今大きく動いています。
市場連としても、情報を収集しながら連合会としての取り組みを始めようとしています。
今はまだQRコード決済を見かけることは少ないかもしれません。何度かコンビニでQRコード決済をお願いしてみましたが、まだ不慣れな店員さんもいるようです。
まず、キャッシュレス決済を経験してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
初めは戸惑うかも知れませんが、自分で何度かやってみて、他の人にも話してみて、感じてみることから。そこから始めると「キャッシュレス社会」への理解が深まるのではと思っています。

参考資料
経済産業省 「キャッシュレスビジョン」 2018年4月
岩田昭男 「キャッシュレスで得する!お金の新常識」 2018年7月

福田 浩
アートシステムコンサルティング代表 ウェブコンサルタント ビジネスコーチ
ICHIBA-KOBEプロジェクトでは動画編集、ウェブ関連を担当