元町商店街の西端にたたずむ阪神 西元町駅。
ひっそりと静まる改札を抜けて、山手に伸びる狭い階段を昇れば、「メルカロード宇治川」と書かれたアーケードが見える。
お世辞にも活気のある市場とは言えない。
でも確かに、賑わいのある通りだったと人は言う。
今なお営業を続ける店舗を見れば、その名残が感じ取れる。

ところで、宇治川センター。
市場の名前に宇治川とあるが川はない。いや、正確に言うと、この川は暗渠化しているので、見えないのだ。
メルカロードのアスファルトの下には川が流れていて、その水はハーバーランドへと注がれる。

長きに渡り、この市場で商いを続ける店主によると、宇治川センターを苦境に追い込んだ出来事が3つある。

1.水害
昭和42年に起こった宇治川の氾濫。集中豪雨によって川が氾濫し、店舗に甚大な被害をもたらした。

2.地震
平成7年の阪神淡路大震災。多くの犠牲者を出した災害の影響で、住民の数が減ってしまった。

3.利用客の減少
量販店、大型スーパー台頭により利用客が減少。新興勢力に対抗する術を持ち合わせていなかった。

閉店へと追い込まれた店舗が増える中で、健闘を続ける店舗もある。
「ワシはこれしか知らん。これしかやることがない。やることがないから、続けとるんや。」
斜に構えた態度で放つ言葉の真意はきっと裏腹。負け戦をするために、商いを続けるはずはない。

時代は変わる。人も変わる。嗜好も変わる。

商いも人生も、いつも順調とは限らない。それでも勝機は必ずやってくる。
勝者になる条件は、続けることと諦めないこと。逆風の中で力を蓄え、追い風が吹いたその時に、もう一度言ってほしい。

「ワシはこれしか知らん。これしかやることがない。やることがないから、続けとるんや。」

宇治川センターは今日も晴れ。騒音と雑音と心音の聞こえる素敵な市場。

松尾 良彦|株式会社ラーベン・アンド・ニールセン 代表取締役/教育コンサルタント/人材プロデューサー。
ICHIBA♡KOBEプロジェクトでは、隠れた市場の魅力を発掘しています。